『年収は「住むところ」で決まる 雇用とイノベーションの年経済学』 [本]
原著のタイトルTHE NEW GEOGRAPHY OF JOBSからこの日本語はちょっと挑発的な感じもする。アメリカの都市間において、収入や環境に大きな格差が生じているが、それがどのようなことから生じてくるかを説明している。イノベーションを起こす企業が集まる都市にはそれを担う人たちが集まり、そしてそれにつれて一般のサービス業などに従事する人たちの収入もあがる、ということが統計的に調べると関連がある、ということのようだ。
アメリカでの例なので、日本ではどうか。そもそも日本にイノベーション企業が集中する都市が点在する、と言うイメージがわかない。
イノベーションの担い手はだれか。
p312
とくに、中国系とインド系が目立っている。また、移民系の発明はコンピュータや製薬などのハイテク分野が中心なのに対し、非移民系の発明は伝統的な製造業関連が中心だった。
あらゆる研究結果が物語っているのは、アメリカの技術的進歩に対する移民の貢献が拡大しているということだ。そうした統計自体は私も知っていたが、シリコンバレーのハイテク企業を実際に訪ねた時に目の当たりにした現実には驚かされた。アメリカ経済で移民が大きな役割を担っていることを疑う人は、ハイテク企業に足を運び、社員食堂で食事をし、社員と会話してみるといいい。アメリカのイノベーションのかなりの割合がアメリカ生まれでない人たちによって成し遂げられていることを、肌で理解できるだろう。
もう10年くらい前になるだろうか、ある信号伝送系のICの選定で日本とUSのICメーカーの技術者とやりとりをしたが、技術力もスピードもUSの方が優れていた。USの技術者は名前から想像するにインド系の人だと思う。
p313
対照的なのは日本だ。1980年代、日本のハイテク産業は世界の市場を制していたが、この20年ほどでかなり勢いを失ってしまった。とくに、ソフトウェアとインターネット関連ビジネスの分野の退潮が目立つ。運命が暗転した理由はいろいろあるが、大きな要因の一つは、アメリカに比べてソフトウェアエンジニアの人材の層が薄かったことだ。アメリカが世界の国々から最高レベルのソフトウェアエンジニアを引き寄せてきたのと異なり、日本では法的・文化的・言語的障壁により、外国からの人的資本の流入が妨げられてきた。その結果、日本はいくつかの成長著しいハイテク産業で世界のトップから滑り落ちてしまった。別の章で述べたように専門的職種の労働市場の厚みは、その土地のイノベーション産業の運命を決定づける要因の一つなのである。
エレクトロニクス関連においても、そう90年代後半にはかなり傾きかけてきたのだろうな、とふり返ると感じる。
年収は「住むところ」で決まる 雇用とイノベーションの都市経済学
- 作者: エンリコ・モレッティ
- 出版社/メーカー: プレジデント社
- 発売日: 2014/04/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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